【直球緩球】ウィルコム・喜久川政樹社長

2006年12月29日 産経新聞 7ページ(経済面) (1,196字)

■PHS純増維持に強気

 −−毎月の純増数が好調で、累計契約者は430万件を超えた

 「2年前にKDDIから米投資ファンドのカーライルグループに親会社が移行し、今年8月にはウィルコム発足後初めて単月の営業黒字を達成できた。再起のきっかけとなったのが音声定額サービスだ。これで従来のデータ通信定額サービスと合わせて2本柱が整い、業績拡大につながっている」

 −−ただ、モバイル市場全体に飽和感がある

 「確かに昔とは違って倍々ゲームとはいかないが、今後も毎月数万から10万件の純増ペースは維持したい。当社が得意にしているデータ通信系端末の市場規模は、法人を中心に数百万件はあるとみており、今後も伸びる。また、音声定額サービスも堅調で口コミで広がりやすい」

 −−携帯電話業界もデータ通信の高速化を進めている

 「PHSの最大の強みは全国16万局という基地局数の規模だ。1基地局あたりのカバー範囲は500メートルと細分化しており、他者と混信して通信速度が遅くなる心配が少ない。さらに現在の規格を高度化しており、通信速度は来年春までに最大毎秒512キロビットに向上。来年度以降に現行の約2倍以上の800キロビット以上に引き上げる計画だ」

 −−さらなる料金値下げはないのか

 「はっきりいってかなり限界値だ。1人あたりの月間平均利用料は約4000円。単純にいうと携帯会社の半分近くの価格で提供していることになる。価格競争力は十分にあると考えており、今後はPHSの安全・安心面や料金体系の分かりやすさを訴えていきたい」

 −−異業種とのパートナー戦略を進めている

 「顧客のすそ野拡大が狙いだ。当社が通信部分を受け持つことで、バンダイや家電量販店など通信会社以外が、自社の顧客に合ったPHS端末を発売できるようにしている。携帯電話にはないビジネスモデルで、今後もマーケットを一個一個積み上げていくつもりだ」 

−−上場の時期は

 「未定だ。上場は財務の健全化を図るための通過点であり、上場そのものを目的にしているわけではない」

■データ通信で復権

 カーライルグループの傘下で“PHS復権”を果たしたが、取り巻く環境は厳しい。これまでデータ通信に強い特徴を生かし、携帯電話ユーザーに対する2台目需要を掘り起こしたが、携帯電話でも高速化は急速に進んでおり、すみ分けは難しくなっている。モバイル市場全体に飽和感が漂い顧客の奪い合いも始まる中、10月に就任した喜久川政樹新社長の次の一手に注目が集まる。(冨岡耕)

【プロフィル】喜久川政樹

 きくがわ・まさき 早大商学部卒。昭和62年第二電電(現KDDI)。DDIポケット(現ウィルコム)に移り、取締役などを経て平成18年10月から現職。趣味はスキーで「年間30回は行く」という。43歳。広島県出身。