インタビュー/ウィルコム社長・喜久川政樹氏「来年度黒字化達成へ」

2006年12月28日 日刊工業新聞 5ページ (1,301字)

 PHS専業のウィルコムは11月末の加入者が約432万件となり、1年間で約76万件の純増を達成する堅調な成長を続けている。ただ携帯電話業界が同番号移行制度(MNP)で激しい競争を繰り広げ、同社にも余波が及ぶ。10月26日付で社長に就任した喜久川政樹氏に戦略を聞いた。

――MNPの影響をどう見ていますか。

 「通常なら毎月平均5万−6万件の純増があるが、11月は2万5000件と影響を受けている。とはいえ携帯3社があれだけ宣伝し、店頭での端末価格も引き下げている中で純増を確保できたことを前向きに評価している。当面は純増数の回復に取り組みたい」

――具体的にどういう手当てを講じますか。

 「当社の施策の王道はサービスや特徴を理解してもらい指名買いにつなげることだ。そのために『070』で始まる番号ならNTTドコモユーザー向けを含めすべて音声定額になるというシンプルな料金体系をつくった。さらにデータ通信定額や低電磁波というPHSの特性を生かして、法人市場や医療機関向けの開拓にも取り組む」

――PHS端末での戦略は。

 「SIM(加入情報を記録したICカード)を他事業者に開放したことで、今年はシャープのスマートフォン『W−ZERO3』やバンダイの子供向けケータイ『ぱぴぽ』など多彩な端末が登場した。今後投入する端末やSIMはすべてPHSの新しい通信規格『W−OAM』に対応したものにし、高速化や音声品質の向上を進める」

――黒字化や上場のめどは。

 「すでに8月から月次ベースで経常黒字を達成している。07年3月期通期での黒字化はMNPの影響もあり不明だが、08年3月期の黒字化は確実に達成させる。上場は資金調達の必要性と株主の意向が合致した時に行う。株主も上場してすぐに株価が下がるような事態は望んでいない。今やるべきは経営基盤をしっかりと確立することだ」

――次世代PHS導入に向け2・5ギガヘルツ帯での免許付与を求めています。

 「現在総務省が免許付与を検討している2・5ギガヘルツ帯は、ほとんどの事業者が(次世代高速無線通信技術の)『WiMAX』での参入を表明している。当社は一般的には不利と見られているがデータ定額制で先行するなど周波数を有効に利用するノウハウでは絶対に他社に負けない自信がある。最終的に決定するのは総務省だが、我々はあきらめるつもりはない」

【略歴】

 きくがわ・まさき 87年(昭62)早大商卒、同年第二電電(現KDDI)入社。01年DDIポケット(現ウィルコム)総合戦略部長、02年取締役、04年執行役員経営企画本部長。広島県出身、43歳。

【成長に携帯3社との勝負不可避】

 PHSはNTTドコモが新規加入の受け付けを停止し、電力系事業者の多くも撤退するなど事実上、ウィルコム1社が残るだけになった。携帯電話が高機能化競争を繰り広げる中で、定額化やオープンインターネットへの展開など独自性を発揮。ただ市場は飽和状態に近づき、今後の成長には携帯3社との真っ向勝負が避けられない。生え抜きの喜久川社長と技術、営業担当の執行役員副社長との新体制が、変化の激しい市場にどう対峙(たいじ)するのか注目したい。(編集委員・赤穂啓子)