インタビュー/ウィルコム・八剱洋一郎社長「法人向け需要に照準」 2005年3月1日 日刊工業新聞 P.11 04年10月に筆頭株主がKDDIから米投資会社カーライル・グループに代わ り、社名も新たに再出発したPHS最大手のウィルコム(旧DDIポケット)。 累計契約数シェアで30・4%(1月末)を握る2位のNTTドコモがPHSか らの撤退を表明したことで、シェア66・4%(同)の同社が市場を席けんする することになる。だが市場が縮小傾向のPHSは果たして復権できるのか。PH Sや携帯電話でも実現していない音声通話料の定額制を検討中の同社。1月に社 長に就任した八剱洋一郎氏に再生に向けた“奥の手”を聞いた。 ―月々一定額を支払えば、PHSの音声通話がかけ放題になる定額制の導入を検 討中ですね。 「PHS同士の通話、PHSから携帯電話および固定電話への通話のうち、どこ まで(定額制の)対象とすべきか。PHSから携帯や固定電話への通話にはアク セス・チャージ(接続料)の負担を伴う。このためPHS同士の通話への導入を オプションの一つとして検討している」 「アンケートを実施すると、携帯電話の契約者の中には2台目を求める需要があ った。(2台目がPHSなら)PHS同士の通話だけでも定額制のニーズはある 」 ―その新サービスでどこまでPHS契約者を伸ばせると見ていますか。 「効果を推定するのは難しい。ただアンケートでは月額5000円の定額制でも 魅力を感じる顧客がいた。現在、当社のPHS契約者の平均通話料金(基本料金 および携帯・固定への通話を含む)は月額4000円ぐらいだが、これより高い 金額でも使ってもらえる感触を得た。法人に多くの需要があると思う」 ―定額制は通話料収入を減収させかねない。導入に向けた収益対策は。 「(NTT交換機を介さず、PHS基地局からIP基幹網に音声データを直接伝 送できる)ITX(IPトランジット・イクスチェンジ)装置のNTT局舎内へ の設置がかなり進む。05年度中には音声とデータ通信の60―70%がNTT 交換機を経由しない環境になる」 ―ドコモがPHS市場から撤退します。 「これまで(ドコモなど)他社がPHSの技術をあまり進化させてこなかったの は残念なこと。PHS技術を進化させてきたのは当社だけだ」 ―データ通信料の定額制サービス「エア・エッジ」が強みですが、これから狙う 市場は。 「売上高の半分に届かない法人向けを伸ばし、個人と法人を50対50にしたい 。また自動販売機などにPHS機能を付加し、無線で商品の在庫状況がわかるサ ービスなども導入されつつある。PHSは医療機器への影響も心配なく、病院も まだまだ開拓の余地がある」 「データ通信速度も(2月から体感速度が第3世代携帯並みの最大毎秒1メガビ ットの新サービスを始めたが、中期的には)8―10メガビットの体感速度まで 達成できると思う」 ―PHS契約数(1月末で299万台)の今後の見通しは。 「400万契約への可能性は十分にある。今後3―5年は微増ながら目に見えて 増えるようにしたい。(筆頭株主の)カーライルは3―5年後に株式上場といっ ている」 【記者の目/カギ握るデータ通信事業の強化】 通話料への定額制導入がPHS復権の起爆剤となるかどうか。携帯電話への参入 を狙うイー・アクセスも自社の契約者間に限ったウィルコム同様の定額制の導入 を検討しているほか、ソフトバンクも携帯参入に伴い通話料定額のサービスを視 野に入れている模様。果たしてウィルコムの”専売特許“となるか。その効果の 程度も不透明なままだ。 NTT交換機を使わないコスト構造に改善する同社。浮いた資金を定額制以外に どう振り向けるか。需要が見込める法人向けデータ通信事業の強化が定額制以上 にPHS復権を大きく左右する。