逆襲するPHS 京セラ・ウィルコムの挑戦(下) 増資の意図 通話範囲・品質で独自戦略 中国視野、次世代基地を開発 2005年5月26日 朝刊 13ページ  二〇〇四年十月、主にKDDIが所有していたDDIポケット(現ウィルコム )株式は買収でカーライルが60%、京セラが30%、KDDIに10%を残す 新構成となり、KDDIの手元を離れた。ウィルコム新体制は取締役最高顧問に 稲盛和夫京セラ名誉会長、取締役に西口泰夫京セラ社長が就任。役員構成は京セ ラ色が一層際立っている。  PHSは一九九〇年代後半に通話料が安価な簡易型携帯電話で人気となった。 DDIポケットの契約数もブームで急伸したが、最近は携帯電話に押されて伸び 悩む。契約数は携帯電話最大手NTTドコモの四千八百万件に対し、ウィルコム は三百万件。好調なエアエッジのデータ通信利用が半数以上を占め、音声通話は 携帯が主流になっている。音声通話の拡大が難しいPHSに見切りを付け、NT Tドコモは事業撤退を決めている。  厳しい経営環境の下、京セラはなぜPHSに投資するのか。京セラで長年PH S事業拡大に努めてきた西口社長は「PHSはまだ潜在能力が発揮されていない 。ウィルコムの活用次第ではPHSは大幅に伸びる可能性がある」と増資の意図 を語る。  一基地局で広範囲をカバーする携帯電話と違い、電波が微弱なPHSは基地局 を数多く設置する「マイクロセル方式」を採用している。一局に電波が集中する 携帯電話と異なり、電波が多数の基地局に分散するため、携帯電話では不可能な 音声やデータ定額制が実現できる強みがある。  ウィルコムは通話品質と通信範囲を重視し、事業開始当初から有効範囲五百メ ートル程度の広範囲基地局を使用した。微弱な電波基地局を採用したライバルの NTTパーソナル(ドコモへのPHS事業継承前の社名)と違い、基地局設置の 投資は少額で済む利点があった。  その効果で現在、ウィルコムの基地局は十六万局、通信範囲の人口カバー率は 97・2%にまで拡大、PHSがつながりにくいイメージをぬぐい去った。京セ ラはウィルコムの勝因を「通話さえできればよかったパーソナルと範囲や品質を 重視するDDIポケットはスタート時のコンセプトが違った」(西口社長)と分 析。そのコンセプトを維持しつつ、多数の基地局網を活用して独自戦略を展開す るウィルコムのPHSは最近、携帯電話と異色の存在感を持ち始めた。  PHSの拡大が進めば国内で京セラ製端末の販売が増える。国外でも契約数が 七、八千万台に上る中国を視野に入れ、京セラはさらに広範囲をカバーする次世 代基地局も開発。端末と基地局で自社事業を伸ばすと同時に事業を拡大するウィ ルコムを後方支援する。  ウィルコムは京セラの持ち分法適用会社となり、リターンとして二十億円規模 の利益が上乗せされる効果も大きい。西口社長は「ウィルコムは契約数を積極的 に伸ばし、京セラがその道具を開発する。このサービスが成功すれば大きなビジ ネスになる」と先を見据える。