逆襲するPHS 京セラ・ウィルコムの挑戦(上) 相乗効果 「通話定額」で台風の目に 戦略共有 機種多様化、攻勢へ 2005年5月25日 朝刊 13ページ  「二千九百円で話し放題」−。ウィルコムが五月から始めたPHS(簡易型携 帯電話)同士の通話定額制は、通信業界に大きな衝撃を与えた。電話の定額制は 日本初の試みで同社には問い合わせが殺到した。カップルや法人向けに大幅に契 約数が増え、月間数千件程度だった純増数は、サービス開始前の四月に早々と月 間約六万件にまで急伸した。  ウィルコムの八剱(やつるぎ)洋一郎社長は「定額制導入の反響は予想以上。 携帯電話利用者にも発信用として二台目を持つ『ダブルホルダー』も狙っている 。音声定額制で三百万利用者を四百万にまで伸ばす」と期待は大きい。  だが、その目標達成には大きな課題がある。PHS利用者にとって一番の不満 は端末の種類の少なさ。現在市場に出回る主力機種はわずか三種類で利用者の選 択の幅がないのが現状だ。そこでウィルコムは大株主になった京セラの端末開発 に大きな期待を寄せている。  携帯電話のauを擁するKDDI傘下では「携帯電話と機能が食い合うため、 PHS端末開発への投資は軽視されていた」(業界関係者)。だが、新株主構成 になったことで八剱社長は「KDDI傘下時のPHS開発は携帯電話事業と調整 が必要だったが、伸びる事業については何でもできる状況になった」と話す。京 セラ側も株主として発言力を持ち、「ウィルコムと将来の戦略を共有化し、リス クを背負って新端末を開発できるようになる」(西口泰夫京セラ社長)と相乗効 果を口にする。  PHSで長年端末を開発してきた京セラは、PHS最大のヒットとなった端末 「AH−K3001V」を発売している。京セラのエアエッジフォンを略した愛 称で「京ぽん」と親しまれる機種はパソコン用ホームページを見られる世界初の 端末として十万台を超えるヒットとなり、音声定額制導入の新規端末購入者の九 割が京ぽんを選択するまでになった。  京セラは現在、京ぽんに次ぐ「新機種を開発中」(西口社長)。ウィルコムに よると、現在データ通信速度三十二キロビットだが、新機種はその四倍程度で体 感速度は第三世代携帯電話程度になるといい、秋口にも発売の見込みだ。  また、PHSの基幹部品のみを提供し、外側部分を端末メーカーに製造しても らうジャケットフォン制度も導入した。同制度の導入でPHS端末の開発に新規 参入を促す計画で、「すでに数社か参入に動き出している」(ウィルコム)とい う。八剱社長は「端末を選べないのはPHSの長年の課題だった。できるだけ早 く発売して解決したい」という。  ウィルコムにとって京セラは「PHSの最大の理解者であり、最良のパートナ ーでもある」(八剱社長)。定額制導入から携帯端末開発へ。ウィルコムと京セ ラがシナジー(相乗)効果を発揮する時がいよいよやってくる。  PHS最大手のDDIポケットが、京セラと投資会社のカーライルによる株主 構成となり、二月に新会社「ウィルコム」として出発した。五月からは電話の常 識を覆す音声定額制を導入し、純増数も急増中で通信業界の台風の目となりそう なウィルコムと京セラが描くPHSの成長戦略を探った。 ウィルコム・八剱社長に聞く 早期に400万人突破  −2月からウィルコムとして再スタートを切った。新たな目標は。  「四百万利用者を早期に超えたい。音声定額制で加入者は増加し、撤退するN TTドコモからの乗り換え案件も増えている。法人向けや家族向けに安価なプラ ンも好評で、全体的に追い風になっている」  −京セラが増資して大株主になった。  「稲盛和夫最高顧問には事業計画と月次決算を報告し、想定以上に加入者が増 えた場合のネットワークの確保や設備投資の重要性など貴重な指導をしてもらっ ている。取締役の西口泰夫社長にも経営面で多くのアドバイスをいただいている 」  −PHSはよみがえるか。  「携帯電話にはないマイクロセル方式の長所を活用して事業展開する。自社の 強みをよく理解してこれまでの経験を生かしながら事業を伸ばし、三−五年の間 にウィルコムの上場を目指したい」